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脚ロボットについての研究

我々は,不整地(凸凹した環境)を走破できるロボットとして,脚ロボットに注目して研究を行っています. それは,動物や人間に代表されるような脚をもった生物は,現在の車輪やキャタピラ型のロボットでは走破することが出来ないような環境を,簡単に走破することが出来るからです. そのような高い走破性能を持ったロボットを作るために,我々は以下の2つの視点から研究を行っています.

  • 脚ロボットの動き方を,動ける不整地を増やすように提案していく研究(脚探り歩行
  • 生物の動きを観察し理解して,それを将来ロボットに生かしていこうという研究 (バウンド歩行6脚ロボット
  • 以下で,それぞれの研究について詳しく説明しています.

  • 脚探り歩行についての研究
  •     背景     概要
  • 四脚動物の歩容に関する研究
  • 6脚ロボットの歩行方法についての研究
  • 3脚モジュラーロボットの研究


  • 脚探り歩行についての研究

    背景

    災害現場における被災者の探索作業は,二次災害などの危険性があるため作業者にとって危険を伴うものであり,このような作業がロボットによって代替されることが期待されています. また,惑星などの極限環境において作業するロボットも今後必要とされています. このようなロボットとして,走破性能の高さから脚型ロボットが注目されており,さまざまな不整地における歩行方法が提案されて来ました.

    しかし,災害現場などにおいて足場が壊れてしまうような環境(がれきの山とか)は多く存在するにも関わらず,その環境に適応できる歩行方法についてはあまり研究されてきませんでした. そこで,今回我々のグループでは,足場が壊れてしまうような脆弱な環境における4脚ロボットの歩き方を提案しました.

    概要

    提案した歩行方法のコンセプトを説明します. 4脚ロボットは,毎回地面に1歩づつ足を置く時に,その足場が壊れるかどうかを力を加えて確認します(脚探り). もし脚探りをおこなって足場が壊れたとしても,ロボットの体勢は崩れないことを保証します.すると,その後に別の安定な足場を同じようにして探すことが出来ます. 以上のコンセプトで歩けば,脆弱な環境でも,ロボットは安定な足場だけを選んで進むことが出来ます. 本研究では,そのような戦略を実現するための具体的なアルゴリズムを開発しました.

    The flow of Leg-grope-walk

    実験を行った時の動画が以下に上がっています. 足場に力を加えて環境を確かめながら進むことが出来,もし足場が壊れてもロボットは体勢は崩さないことが実験のセンサデータより示されています.

    参考文献

  • 亀川哲志,鈴木隆司,大谷浩一,松野文俊:"脆弱環境下での移動を実現するための4脚移動ロボットの足探り動作による足場認識と歩行の実現",日本ロボット学会誌, Vol.28, No.2, pp.215-222 (2010)
  • Yuichi Ambe and Fumitoshi Matsuno, "Leg-Grope-Walk---Walking Strategy on Weak and Irregular Slopes for a Quadruped Robot by Force Distribution", Proc. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS2012), pp.1840-1845, 2012.

  • 四脚動物の歩容に関する研究

    概要

    イヌやウマなどの四脚動物は, その移動速度に応じて様々な歩き方(歩容)をする. 例えば, 低速域では1脚ずつ動かす「ウォーク」, 中速域では2脚同時に動かす「トロット」もしくは「ペース」, 高速域では4脚を別々に動かす「ギャロップ」というように歩容を変化させていることが知られている. ここで, 「トロット」とは対角関係にある前後の2脚が同期した歩容であり, 多くの動物が採用している. 一方, ペースとは左右同側にある前後の2脚が同期した歩容であり, キリンやラクダなど限られた動物しかペースで歩くことはない. また, イヌのように, 健康状態に依存してトロットとペースを切り替える動物もいると言われる. このように, ペースとトロットに関しては不思議な現象が多いが, 動物がなぜこの二つの歩容を使い分けているのかについては, 未解明のままである. 本研究では, 図のようなシンプルな3次元の受動モデルを用いて, ペースとトロットとの間にどのような力学的な差異があるのかを明らかにし, 上記のような疑問に対し動力学の観点から理解しようとしている. 動力学シミュレーションの結果から, ペースの方がトロットより脚にかかる床反力は概して小さくかつ受動的に安定であり, 一方トロットの方がペースより省エネルギーであるという, トレード・オフの関係にあることが判明した. また, 移動速度に依らずに上記の関係が成り立つことが分かった.

    図1. 3次元力学モデルの全体図

    Example

    図2. 動物によるペースとトロット(京都市動物園にて撮影) 左右同側の脚を同じ色の線で表している.

    Example

    動画1.トロット

    動画2.ペース

    参考文献

  • 安達真永, “3次元空間における四脚モデルを用いたPaceおよびTrot歩容の動力学解析”, 学士論文, May/2017.

  • 6脚ロボットの歩行方法についての研究

    背景

    さまざまな昆虫は速度に応じてある一定のパターンを持った歩行を行うことが古くから知られている. 例えば,速いスピードであれば3脚を同時に浮かせる"Tripod gait"という歩き方が観測され,速度が遅くなると2脚を同時に浮かせる"Metachronal gait"というように歩き方が変わっていく.

    しかし,そのような歩き方がなぜ生まれるか,どのように生まれるかはほとんど理解されていない. 本研究では単純な6脚のロボットモデルを構築し,位相調整機構を提案することで,以上の疑問に答えようとしている.


    概要

    モデルとして図1のような6脚ロボットを考え,それぞれの脚を振動子によって周期的に駆動させる. それぞれの振動子は位相調整機構をもっている(図1). これは,脚の接地したタイミングによって振動子の周期を変えるシステムであり, 脚の接地したタイミングが脚軌道における接地タイミングAEPより早ければ(図2-点A)“Phase Reset”がはたらき周期が短くなり, 逆の場合(図2-点B)は“Phase Inhibition”によって接地タイミングに応じて周期が長くなる. なお,左右の振動子には逆相で振動するような拘束を入れる.(図1)

    Example

    物理シミュレーションの結果,振動子間に明示的な関係はないにも関わらず,位相調整機構の効果によって,ロボットの歩き方は生物に見られるような歩き方に収束した. また,速度とともに昆虫同様に歩き方も変わることが分かった(動画).この運動は,ロボットと環境との相互作用によって創発されたものであり,非常に興味深い. この現象を深く分析することで,昆虫の動きに対する理解を深めようとしている.

    参考文献

  • Yuichi Ambe, Timo Nachstedt, Poramate Manoonpong, Florentin Wörgötter, Shinya Aoi and Fumitoshi Matsuno, "Stability Analysis of a Hexapod Robot Driven by Distributed Nonlinear Oscillators with a Phase Modulation Mechanism", Proc. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS2013), 2013.

  • 3脚モジュラーロボットについての研究

    背景

    災害現場における被災者の探索は迅速に行われなければなりません. このようなタスクを代わりに行うロボットとして我々は3脚モジュラーロボットを提案しています.

    ASHIGARU.jpg

    開発のコンセプト

  • コンパクトな多数のロボットで探索を行う. 脚ロボットになっているので1体でもある程度移動することができます.
  • 1体で動けない場合は合体してタスクを協力して行う.たとえば以下にある写真のように,協力してさまざまなタスクをこなすことができます.

  • このような形状可変のロボットをどのようにコントロールしたらよいかということについて,研究を行っています.

    参考文献

  • Masaki Ohira, Ranajit Chatterjee, Tetsushi Kamegawa, and Fumitoshi Matsuno, "Development of Three-legged Modular Robots and Demonstration of Collaborative Task Execution", Proc. IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA'07), FrB12.5,10-14 April, 2007